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富士通の変革から、日本のITの未来を変える
杉本 拓真 × 田中 秀和 × 佐野 勝典
「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスを掲げ、事業の構造改革と社内文化の変革を推し進めている富士通。全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation」を進めながら、世界8カ所のグローバルデリバリーセンターと連携する日本でのニアショア組織「ジャパン・グローバルゲートウェイ(以下、JGG)」を2020年11月に設立し、サービスデリバリーの変革にも力を入れています。富士通を変革し、日本のIT産業の変革をも見据える展望や今参画する魅力、多様性ある働き方などについて、JGGの最前線で活躍する3名に伺いました。
出典:ビズリーチ 公募ページ「富士通株式会社」(2021年10月21日公開)より転載
「標準化」と「シェアードサービス」を軸に、社内から変えていく
ジャパン・グローバルゲートウェイ SAPシェアードサービス統括部 統括部長/杉本 拓真
Q. まず、JGGが立ち上げられた背景とビジョンから教えてください。
日本のIT人材は2030年には79万人不足するとされており、人材不足が社会課題となりつつあります。また、国内のIT産業では多重下請け構造も課題で、富士通もこの構造のなかにおります。
これによる問題は、業界の人材不足によって採用コストが上がるということです。さらに多重下請け構造によって開発コストも上乗せされると、最終的にサービスの提供価格は上昇することが予想されます。適正な価格でサービスを提供できなければ、富士通の競争力は弱まります。同じことが業界全体でも起こるので、日本のIT産業はさらに世界から後れを取ることになるわけです。こうした未来を回避するための一手がJGGなのです。
まずは、グローバルリソースを積極的に活用し、社内構造から変えていきます。そうしてJGGは日本とグローバルのリソースを融合させた体制づくりを牽引し、内製化比率を高めることによって適正価格での高品質なソリューションの提供を目指します。直近では、2022年までに9,000人のグローバルリソースを日本向けデリバリー体制に融合させることを計画しています。ゆくゆくはグローバルリソースを組み込んだデリバリースキームの仕組みをプラットフォーム化し、同じ課題を抱えるユーザー企業様または国内ITサービスベンダーへソリューションとして提供することを目指したいと考えています。そうすることで富士通が日本の社会課題を解決する一助になればと思います。
Q. その実現に向けて、現在はどのような取り組みに注力されているのでしょうか。
「徹底した標準化」と「シェアードサービス化」に力を入れています。まず標準化ですが、これまで富士通では個別最適が優先されて全社レベルでの標準化があまり進んでいませんでした。例えば、同じようなソリューションが複数部門で存在していたり、やっていることは同じなのにプロセスやツールがバラバラだったりしていました。その結果、ナレッジが散在していたり、変化に対して「1つを変えればいい」という対応ができず、変化へのスピードがどうしても遅くなっていました。そしてこれがグローバルリソース活用のボトルネックにもなっていたのです。そこで「徹底した標準化」を今まさに進めています。
もう1つはシェアードサービス化です。JGGでは「リソースプール制」の取り組みを進めています。具体的には、部門型から機能(スキル)別のリソースプールへの移行を進めています。これにより各部門に散らばっていたリソースが1カ所に集約されるため、ナレッジの集約・展開が容易となり、標準化も加速することが期待できます。そして標準化を進めることで、どのプロジェクトでも同じ「やり方」になります。
同じやり方、全社でのリソースプール、この2つによりシェアードサービスを実現していきます。これを実現することで、従来の人月でのサービス提供から従量課金やサブスクリプションといった形でのサービス提供も目指していきたいと思っています。
人材の流動性を高め、誰もが希望のキャリアを歩める組織へ
Q. 人材の流動性や適材適所という点では「ジョブ型人事制度」を導入されていますが、それによって変化したことなどはありますか。
2020年4月より管理職にジョブ型人事制度を導入しています。この制度はジョブ(職責)の大きさや重要性を格付けし、報酬に反映することで、より大きな職責へのチャレンジを促すものです。以前は各部門で選出したメンバーから管理職を任命していましたが、ジョブ型人事制度ではジョブディスクリプション(職務記述書)を全社に提示して、社内ポスティングを行います。社内ポスティングに応募したメンバーのなかから管理職を任命します。チャンスを公平に与え、チャレンジするメンバーから任命するというのが今までと大きな違いです。
この社内ポスティング制度のスコープは管理職だけでなく、一般社員も対象です。この導入により、人材の流動性は今かなり変化してきていると強く感じています。
今回、「DX企業になるために人材の流動性が不可欠」と、トップが強くメッセージを発信したことで、社内ポスティングは制度として浸透が進んでいます。それによる効果として、まず社員が自分で手を挙げて自身の望むキャリアを歩みやすくなりました。また、人材を公募する際にも、明確で魅力的なビジョンを打ち出すことができている部門は訴求力が強くなるため、人も集まりやすくなります。逆もしかりです。その結果、部門長は自部門のビジョンをかなり意識するようになりました。これによって、パーパスドリブンがよりいっそう組織運営に根付いてきていると感じています。
Q. 杉本さんはジョブ型人事制度の導入前から「手を挙げる」ことで責任あるポジションを任されてこられたそうですが、キャリアの歩みについて教えてください。
2004年に入社して、プログラミングやパッケージ導入に従事していましたが、4年目から商談やプロジェクトのリードを任されるようになり、十数社のプロジェクトでPMを務めました。10年目からはSAP導入プロジェクトのPMを担い、複数の大規模プロジェクトを推進しています。その間、2019年にマネージャー、2020年にシニアディレクターに昇進し、自ら手を挙げていろいろなチャレンジをさせてもらった結果、2021年から30代では数少ない統括部長を任されています。
今ではジョブ型人事制度により、若手のうちからでも意欲があれば重要なポジションにチャレンジできるようになっています。私は自身の経験から「ポジションが人を育てる」というのを強く実感しています。そのため、意欲のあるメンバーにはぜひ今よりも高いポジションに手を挙げて、成長していただきたいですね。
Q. この記事を読んでいる方に向けてメッセージをお願いします。
富士通は大きな変革期にあり、日本のIT産業の構造を変えていくことを見据えてさまざまなチャレンジをしています。その中心にJGGがあります。私もメンバーも自分たちが「変えていく」とのマインドを持ち、「今、変化している」ということを実感しながら日々過ごしています。「変えていく」というのは決して楽ではないですが、我々に共感いただき、変化にチャレンジしていきたいという方にはぜひ参画していただきたいです。
現代のビジネス変革に不可欠なアジャイルアプローチを推進
ジャパン・グローバルゲートウェイ アドバンスドテクノロジー推進統括部 マネージャー/田中 秀和
Q. JGGではグローバルリソースの活用や標準化への取り組みに加えて、「アジャイルアプローチ」も推進されているそうですが、その概要について教えてください。
アジャイル開発は単にシステム開発の手法だと思われがちでしたが、本来は経営において課題を迅速に発見・判断し、施策を進める際にこそ必要な考え方です。そこでJGGでは、DXを推進するための一手段としてアジャイルの考え方を活用しています。
具体的には、お客様とJGGとビジネスプロデューサー(営業)の三者が一体となってお客様の変革を進めています。アジャイルの取り組みがJGGとビジネスプロデューサーとの間で分断されないよう、経営やビジネス上のビジョンが開発・リリースまでワンストップで正しく紡がれるよう、お客様のトップマネジメントからデリバリーまでを一貫してプロデュースできるように連動しているのが特徴です。
開発面だけでなく、ビジネス変革にもアジャイルを広げている理由は、フィードバックを重ねて改善していくアジャイルの考え方が、この変化が激しい時代での経営において不可欠だと考えているからです。経営にアジャイルを適用するというより、もはや経営とアジャイルの本質は一緒だといえるでしょう。現状では、このことを認識されている企業もあれば、そうでない企業もありますので、啓発や提言も行っています。
Q. 田中さんがご自身の経験のなかで感じられたアジャイル浸透の課題や、それを解決するために歩まれてきたキャリアについても教えてください。
エンジニアとして入社し、2年目にアジャイルの考え方に触れたとき、これが主流になっていくだろうと思いました。その後、本場のアジャイルを知るために2015年にシリコンバレーに数カ月行き、スタートアップのコミュニティに入りました。そこで、アジャイルはそもそも開発手法としてではなく、経営やビジネスのベースであることがわかったのです。
開発の現場でアジャイルを取り入れているだけでは局所的な改善の域を出ないと思い、帰国後、経営層に向けてアジャイルのあるべき姿を強く提言しました。ちょうどその頃、デジタルフロントという「出島」組織が立ち上がったため、そちらに異動してエンジニアからデザイナーに転向し、新規事業創出を担当しました。その後2020年に、お客様のDXを実現する新会社として設立された「Ridgelinez(リッジラインズ)」の社内ポスティングに応募し、コンサルタントとしてお客様の組織変革など、経営コンサルティングにも携わり、トップの意思決定から開発・リリースまで全てを実践しました。
こうしてアジャイルを経営に生かすためにエンジニアからデザイナー、コンサルタントと経験してきましたが、「富士通自体を変革する」というJGGのビジョンに共感し、4月からJGGにジョインしました。現在はアジャイルデリバリーに向けた組織変革活動とそのためのマインド醸成等を担っています。
変革のモデルをつくり、日本全体に広げていけるチャンス
Q. 今JGGに参画することで、どのような仕事や働き方が実現できるのでしょうか。
まずいえるのは、マインド変革からデリバリーまで、さまざまなことにチャレンジできるということです。富士通社内でも「変革への思い」がある人が増え、全社的に組織間の壁をなくそうという風潮があるので、アジャイルの浸透も進めやすく、挑戦しやすい状況だと感じます。私自身、さまざまな組織でアジャイルを軸にキャリアを重ねてきましたが、富士通の大きなフィールドのなかであらゆるチャレンジができるのは大きな魅力です。
広範なグローバルリソースと連携ができるのも、JGGで働く魅力の一つです。私の属するワークグループにも中国やマレーシアのメンバーがおり、多様性を感じながらチームや自分を成長させていける環境があります。
働き方としては、ほぼフルリモートのワークスタイルのため、私は生産性や心のゆとりを考慮し、今年岡山に移住しました。場所を問わず働けることに加えて、副業や社外活動についての自由度が高いのも特徴です。実際に私はJGGでの業務と並行して、社団法人の理事を務めたり、社外のスタートアップコミュニティを立ち上げたり、講演活動を行ったりしています。このような副業・社外活動は「許されている」というよりも、むしろそこでの学びを組織に還元し、新たな価値をもたらすことを期待されているので、積極的にチャレンジしていただければと思います。
Q. この記事を読んでいる方に向けてメッセージをお願いします。
マインドセットも含めて、富士通の経営全体を変えることができれば、このような日本の歴史ある大企業でも変革ができるということで、他社も後に続いてもらえると確信しています。そのために、まずは日本のIT産業が生まれ変われるようなモデルをつくり、それを日本中に広めていきたいと考えています。ITはビジネスの根幹であり、これを飛躍させられれば、すなわち日本全体を飛躍させることにもつながるでしょう。こうしたビジョンに共感し、一緒に未来をつくっていきたい方に、ぜひ仲間になってほしいと思います。
コンサルタント時代とは違う、変革の実行者として
ジャパン・グローバルゲートウェイ アプリケーションシェアードサービス統括部 統括部長代理/佐野 勝典
Q. 佐野さんは2021年3月に外資系コンサルティングファームから富士通に中途入社されたそうですが、転職の経緯や入社後の歩みについて教えてください。
前職では新卒から約20年勤めており、大きな不満はなかったのですが、できあがった方法論やプロセスに従って仕事をするのではなく、何かしら新しいことに挑戦してみたいと感じ、ビズリーチで転職活動を始めました。事業会社で自分が培ってきた経験を生かしたいと思っていたところ、富士通が「IT」「変革」「グローバル」「デリバリーセンター」というキーワードを掲げて人材の募集をしており、これだと思い応募しました。10年以上前、前職で富士通と一緒に仕事をする機会があったのですが、当時に比べて「自分たちが変えていこう」という現場の気概がかなり高まっているのを面接で感じ、それも入社の決め手になりました。
現在は、JGGでアプリケーションマネージドサービス(AMS)領域の推進責任者として、統括部組織内の事業管理、戦略・事業計画の立案、組織開発、内部統制などを担当しています。AMS領域でグローバルのデリバリーセンターを活用し、プロセスの標準化とシェアードサービス化を進めるのがミッションです。
Q. 業務を通して、前職との違いやJGGならではの魅力を感じることはありますか。
違いとしてはまず、成熟し切っていた前職と比べ、今の富士通はまだまだ変わっていく、つくり上げていくステージにあるということです。自身の経験をそのまま当て込むのではなく、現在の富士通に合わせてカスタマイズしながらつくっていく面白さがあります。
また、コンサルタント時代はあくまで外部からお客様のプロセスに関わっていたので、できることには限界がありましたが、今はプロセスの企画から設計、実行まで一貫して携われています。外部からは知りえない実態を把握しながら、内部から変えていく、つくっていく過程の全てを経験できるのは事業会社ならではの醍醐味でしょう。
JGGの魅力としては、「2025年の崖」や人材不足など、日本全体の課題に先行して取り組んでおり、社内外からの注目度が高いことが挙げられます。レファレンスモデルを構築するやりがいがあり、その真っただ中にいることをまさに体感しているところです。
これまでの経験・スキルをより高められるグローバルな環境
Q. 社風や人材の面で、抱いていたイメージとのギャップや新たな発見などはありましたか。
現場では変化に対する抵抗や承認作業の連続などがあり、物事の進みが遅いのではないかといった不安がありましたが、実際には経営層から「JGGの取り組みを推進し、自分たちが変わらないと生き残れない」というメッセージが発信されており、社内全体がものすごいスピードで変わってきています。変化への抵抗の声が全くないわけではありませんが、部下をはじめ、変化しなければという思いを抱えてきた人も多く、一緒にその流れをリードし、広めているところです。
また、外資系のドライな風潮に比べ、日系企業である富士通は圧倒的に「人に優しい」と感じています。一般的に中途入社の場合、最初は社内に人脈がなく苦労しがちですが、JGGでは「そうした件であれば、この人に聞くといい」などとすぐに人を紹介してもらえます。新しい環境で新たなことに挑戦するなかでも、想像以上にやりやすさを感じていますね。
Q. この記事を読んでいる方に向けてメッセージをお願いします。
私はもともとグローバルで通用するビジネスパーソンを目指しており、前職でグローバルのデリバリーセンターと調整してきた経験が今も生かせていることをうれしく思っています。特にJGGでは、グローバルのデリバリーセンターとやりとりする機会が多く、交渉力や調整力を磨けている実感もあります。
このようにやりたいことを実践できる組織であり、発足したばかりでこれから成長していく組織です。何かを与えられてから実行するというのではなく、自分で考えて行動していきたい方を求めていますので、ぜひ一緒にチャレンジし、成長していきましょう。
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