
Interview
インタビュー異業種からの開拓者たち:
Uvance Wayfindersが拓く未来 Vol.1
テクノロジーを起点に、
お客様のありたい未来を実現する
グローバルコンサルティングビジネスグループ長
習田 晋一郎Shinichiro Shuda
流通、消費財、製造、製薬、プライベートエクイティ業界を中心に戦略立案から実行・運用までのプロジェクトを日本・北米・豪州で多数経験。日系グローバル企業や外資系コンサルティングファームを経て、2025年3月に富士通入社。Uvance Wayfindersのグローバルなビジネス展開と組織変革を推進。米国ブラウン大工学部卒。

富士通は2024年2月22日、コンサルティング事業ブランド「Uvance Wayfinders」を立ち上げました。富士通グループが培ってきたテクノロジー、自社および他社に対する様々な変革の実践知を活用することで、業種や業界の垣根を越えた経営や社会の様々な課題を解決するべく、富士通グループのリソースを総結集し、クライアントにとって持続可能な未来を切り拓くことが狙いです。
2025年4月にはコンサルティング専門組織の「グローバルコンサルティングビジネスグループ」を新設し、クライアントの様々な変革を加速する体制を整えました。Uvance Wayfindersがどんな未来を実現しようとしているのか。強みは何か。どのようにクライアントの持続的な企業価値向上に貢献するのか――。
異業種から富士通に参画した4人へのインタビューを通じ、Uvance Wayfindersが拓く未来を紐解きます。
これまで国内外のグローバル企業を
渡り歩いてきていますね。
米国の大学を卒業後、1993年にソニーに入社しました。卒業後も米国で働こうと思っていたのですが、父から「日本に帰ってこい」と強く言われて帰国しました。さんざん喧嘩した挙句でしたけど(笑)。
帰国後、実は父親が好きだったソニーの門をたたいて入社しました。7年ほどの在籍のうち、新事業の立ち上げに携わり、その内海外に3年ほど赴任しました。仕事は楽しく、事業も大きく伸びましたが、さらなる自分自身の成長を求めて外に出ようと思い立ち、アクセンチュア東京支社(当時はアンダーセン・コンサルティング)に転じました。体育会系とでも言いましょうか、厳しいけど優秀な上司のもと、コンサルタントとしての素養を徹底的に鍛えられました。
その後、海外志向が再び強くなり、ユニクロに転職して米ニューヨークでブランドや旗艦店戦略、マーケティングの全面刷新に取り組みました。旗艦店戦略が軌道に乗ってきたところで2009年にアクセンチュアの北米本社に再就職し、その後16年間アメリカ人に囲まれながらアメリカのクライアントの経営や事業、業務支援と複数のプラクティスリードを担ってきました。ソニーでもアクセンチュアでもユニクロでも、新事業の立ち上げをたくさん経験してきましたが、自分の成長が止まりそうなときに異なる場所に挑んできたのかもしれません。

2025年に富士通に入社し、
グローバルコンサルティングビジネスグループの
責任者に就きました。
コンサルティングとしての認知度が
まだまだ十分ではない富士通を
次の挑戦の場所に選んだ理由は何でしょうか。
2006年から北米に住んでいたので、私の中の富士通はほぼ20年前で止まっていたんです(笑)。いわゆるプロダクトの企業のイメージでした。そんな中、2024年11月に社長の時田隆仁と話をした際に「ここまで変革を実行してきたのか」「ここで働きたいな」と感じました。日本でこれほどの変革を目指し、着実に実行している会社があるんだ、と本当に驚いたのを覚えています。様々なハードルを乗り越えながら、ポートフォリオ構造や人事、組織など多くの企業変革を自ら実践しています。そのパワーはすごいな、と思いました。

外部の目線から見た、
今の富士通はどのように評価していますか。
コンサルタントを長くやってきて痛感したのは、ほとんどのコンサルティング企業には核となるテクノロジーがありません。外部のテクノロジーやソリューションをもとにコンサルティングをしていますが、技術革新のスピードがどんどん速まる時代ではどこかで限界が来ると感じています。
一方、富士通にあるのはテクノロジーの総合力です。AI(人工知能)、スーパーコンピューター、量子、ネットワークなど、様々な最先端のテクノロジーとそれらを応用したソリューションを自前で多数持っていますし、それらに継続的な投資をしている。さらに創業90年に渡って築いてきた膨大な量のお客様との関係もあります。富士通自身が変革に率先して取り組んできた実践知もあります。お客様の支援を実現するまで「絶対に逃げない」「やり切る」という日本らしい企業文化も根付いています。富士通は本質的な意味で先進的な日本企業だと思っています。
今の富士通にコンサルティング組織を立ち上げることは富士通の変革のミッシングピースだったと思います。富士通がもっと深くお客様の経営や業務課題の解決に貢献できる可能性があるからです。それらに必要なコンサルティング能力を構築していくのが私たちUvance Wayfindersの大きなミッションだと受け止めています。今までのキャリアではいくつも新たな事業の立ち上げに取り組んできましたが、この立ち上げはこれまでより数倍チャレンジングであり、とても刺激的だと感じています。

Uvance Wayfindersは2024年2月に生まれました。
不確実性の時代に直面する今、
社会や企業は複雑な課題をいくつも抱えています。
不確実性の時代に誕生した
Uvance Wayfindersはどんな世界を
実現しようとしているのでしょうか。
テクノロジーを起点に、お客様の未来を実現する道を拓くお手伝いをするのがUvance Wayfindersです。富士通のパーパスでもある「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」は私たちの哲学であり、まずここが他社と違うところだと思います。
次にUvance Wayfindersは富士通のテクノロジーを基盤にコンサルティング能力を拡充していきます。テクノロジーの活用先はお客様へ提供させていただくものだけではありません。AIファーストで社内のトレーニングプログラム、プロジェクト遂行を加速させるツール類、組織のあり方、評価の仕方など、幅広く適用していきます。これは他のコンサルティングファームにはない差異化要素であり、ゼロから設計できる強みでもあります。
そして、デリバリーをする際にはもちろんコンサルタントだけでなく、エンジニア、データサイエンティスト、業界やテクノロジーの専門家も加わります。お客様とのエンゲージメントモデルも通常のコンサルティングにはない形に変えていきます。
戦略や構想の策定は大事ですが、それだけではお客様のありたい未来を実現できません。逆にテクノロジーだけ持っていても無理でしょう。私たちは高速に進化するテクノロジーを、お客様と描く未来でどのように活用できるか、その進化の道筋は何かをとことん突き詰めます。そして、それらを支えるテクノロジーの基盤を推薦し、使いやすく慣れ親しむことができるソリューションを次々に実装していく。そんな姿を描いています。
クライアントによって課題はそれぞれです。
どのようにコンサルティングをしていくのでしょうか。
富士通の様々な部門とタッグを組みながら、コンサルティングの提案から遂行、実装、運用までを網羅していきます。毎日お客様と接しているフロント部隊から「お客様がこんな課題を抱えています。こんなことをやりたいとのお声があります」という話があれば、それをベースに経営・事業・業務の各課題について仮説を立て、お客様と何度も議論をし、論点を洗い出します。洗い出した論点をもとにソリューション、デリバリー、テクノロジー、業界の専門家、そして必要あればR&D部隊や富士通自身の変革に関わったリーダー達の手を借りて提案書を作り、私たちの支援方法をお客様に打診していきます。
お客様とのエンゲージメントも古典的なパワーポイントベースのコンサルティングではなく、最終的な実装を念頭においた経営判断の支援、経営・事業・業務それぞれの改革の青写真作り、それらを実現できるテクノロジーやソリューションの形成、実装・導入、ビジネスケースの管理、改革を実行するためのチェンジマネジメントも支援していく予定です。
今までの富士通はこれらの一部に特化していたケースが多かったと思います。今後はコンサルティング組織が加わることで総合的にお客様をサポートしていきたいと考えています。富士通のテクノロジーとお客様の基盤に加え、やはり富士通自身が実行してきた(成功も苦労も含む)変革の実践知があるのは、コンサルティングにとっての裏付けになると思います。
「テクノロジー」「お客様の基盤」「変革の実践知」という
3つの強みを土台に、
お客様にどんな価値提供ができるのでしょうか。
おかげさまで非常に多くのお客様と長い間、お付き合いをさせていただいています。お互いの信頼関係はもちろんあるのですが、富士通側は現状に甘んじていてはいけません。「もっと上に引き上げてほしい」「私たちが目指す場所にたどり着くにはこういう話もしたい」といったお客様側のニーズはあるはずです。そうした本音を探り、より達成したい未来をたぐり寄せるためにUvance Wayfindersは必要なテクノロジーを吸い上げ、成長へのストーリーをつくり、お客様に提案し、実行するまで包括的に支援します。
変化のスピードが加速度的に上がる今、次々と新たなテクノロジーが生まれています。その時その時の最先端のテクノロジーを使ってお客様にとってどんな未来を拓けるか。目指すゴールは変わらずとも、ゴールへの道筋やアップダウンはテクノロジーによってより短く、より平たんにできるかもしれません。可能な未来への道(Art of the possible)を最適に常にアップデートし続けるのもUvance Wayfindersの価値であり、約束と捉えています。

Uvance Wayfindersによって、
社会や企業にとってどんな未来が拓けますか。
志を同じくした異業種、異業界をデータでつないだエコシステムをつくり、よりよい未来を実体験していただきたい、と考えています。例えば医療です。
製薬会社、ディストリビューター、病院、薬局、保険会社、金融機関など、患者さんに関わる業種ってたくさんありますよね。それらのデータを安全にきちんと配慮したうえでつなぎ、AIによって治療法や服薬、費用、保険の適用範囲など、治療のために必要な選択肢を提示し、患者さんの選択に応じたシナリオを策定し、患者さんにとって最適なパスを示す。そして治療を実施し、経過のフォロー、その後のフルリカバリーまで支援し、さらに再発防止のための定期的な検査までサポートする。「それって夢物語じゃないですか」っていう指摘もあるかもしれませんが、私は数年の内に実現できると思っています。
もちろん、実現のためにはたくさんのハードルを越えなければなりません。技術的にも制度的にも。今の富士通の強みだけでは足りない部分もあるでしょう。足りない部分は自社で育てつつ、外の知見も借りながら異業種や異業界を束ねて1つの未来を形作ること。それもUvance Wayfindersの大事な役割です。誰も行っていない場所に行く。そのために新しい道を切り拓く。創業以来、富士通のDNAともいえる「パイオニア精神」をUvance Wayfindersにもしっかりと宿していきます。
Uvance Wayfindersを立ち上げていく上での
課題は何でしょうか。
採用です。富士通の中と外、バランスよく人材をそろえたいと考えています。コンサルタントはもちろん重要ですが、エンジニアも必要ですし、アーキテクチャ設計ができる人材も要ります。データサイエンティストも来ていただきたいです。Uvance Wayfindersは純粋なコンサルタント集団ではありません。それぞれの専門分野に強い方々に集まっていただき、それぞれが多様な強みを持ったプロフェッショナル集団と位置付けています。
たくさんの方に興味を持っていただき、仲間に加わっていただけるよう、最適な人事制度や給与体系などの整備を進めています。もちろん、競合のコンサルティングファームに見劣りしない待遇としていきますし、ゼロからつくる強みとして他社で成功した制度なども積極的に取り入れています。逆に他社でモチベーションが上がらなかった制度などは排除しています。トレーニングプログラムも整えていきます。コンサルティング業界出身の方にはテクノロジーの知見を、テクノロジー畑の方にはコンサルティングスキルをそれぞれ身に付けられるようにします。

どんな方にUvance Wayfindersに
加わってほしいですか。
やはり私たちのミッションに共感していただける方々です。あとはテクノロジーに興味があることも大事な要素ですね。テクノロジーが変える世界にワクワクする、Uvance Wayfindersならワクワクを社会に実装できる。そう思っていただける方でしたら本当にウエルカムです。自身の力を試したい、新しい場所で新たなコンサルティングのあり方をゼロから築きたい、というパイオニア精神を持った方にぜひ、来ていただきたいです。
私たちはダイバーシティ(多様性)を何よりも大事にしています。多様性あふれる組織だからこそ、今までにない未来への道を切り拓けるのだと信じています。Uvance Wayfindersの仲間として、未来を照らす冒険への一歩を共に踏み出しましょう。