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先端技術で、競馬場の「未来」をつくる

key word

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キャッシュレスシステム開発

競馬の醍醐味は現場の熱気だが、実は近年、インターネットで馬券購入を済ませるファンも増えているという。「もっと多くの人に競馬場に足を運んでほしい」――そんなJRAの要望を受け富士通が提案したのが、現金を使わず手のひらをかざすことで、安全かつ簡単にデジタル馬券を購入できるキャッシュレス発売機だ。先端技術を駆使して、いかに競馬場を再び盛り上げるか。かつてないスマートな競馬場をつくる挑戦が始まる。

project member

  • 佐藤裕二

    社会インフラビジネスグループ 第三システム事業本部 第四システム事業部 マネージャー

    1993年入社

  • 三浦琢馬

    社会インフラビジネスグループ 第三システム事業本部 第四システム事業部

    2012年入社

benefit of solution

世の中への提供価値

before

抱えていた問題

現金・紙馬券による従来の仕組みが、ファンと競馬場の負担に

JRAの全国にある競馬場・ウインズでは、馬券を購入するために現金とマークシートが必要だった。そのため「現金購入が面倒」「購入した馬券の管理が必要」といったファンの声も多かった。JRAには「来場者数を増やしたい」「現金と馬券を扱う経費を削減したい」というニーズがあった。

静脈認証によるキャッシュレス発売の開発

after

実現した世界

ファン・競馬場ともに馬券購入の煩雑さから解放された

キャッシュレスによる発売機を導入することで、競馬ファンは現金を使わず手のひらをかざすだけで馬券を購入することが可能に。馬券の情報はデータとして保存されるため、購入後に馬券を紛失するリスクもなくなった。さらに、競馬場で取り扱う現金と紙の馬券が減少することで、JRAの経費削減も期待できる。

story

ストーリー

  • 競馬場のキャッシュレス化・ペーパーレス化に挑戦。

    「競馬場の馬券購入システムをキャッシュレス化したい」――そんな構想がJRAから富士通に伝えられたのは、2015年のことだった。その理由は「若年層を中心とした競馬ファンに、競馬場にもっと足を運んでもらうため」。近年はインターネットでの投票(馬券購入)も盛んになり、若年層を含む競馬ファンが競馬場から足が遠ざかる傾向もあった。現金を使わずに買い物ができるキャッシュレスシステムに慣れ親しんだ若年層には、馬券もそうなることで競馬場に足を運ぶきっかけにもなる。

    JRAの経費削減も、このプロジェクトのもうひとつの目的だ。現金で紙の馬券を購入するタイプの発売機は、キャッシュレス発売機と比べて紙のコストがかかる上、大量の現金を運搬・管理することにも人件費がかかる。競馬ファンの利便性・安全性と、競馬場経営の効率化という二つのメリットを同時に実現することが、富士通に課せられたミッションだった。

  • 100万人規模の会員を管理する、史上最大級の手のひら静脈認証システム。

    キャッシュレス化にあたっては、会員専用ICカード「JRA-UMACA」と、既存の記入式マークシートなどをキャッシュレス発売機で読み込ませ、手のひら静脈で本人認証後、馬券購入を行うシステムが採用された。購入情報はデータとして保存されるため、馬券の発券は必要ない。

    手のひら静脈認証は、指紋認証や網膜認証以上に精度が高く、現時点で最もセキュアな認証技術のひとつとされる。しかし、先端技術だけにまだ実績が少なく、100万人規模で実用化するのは国内で例を見ない試みだ。これを実現するため、開発はこの分野で高度な技術を誇る富士通フロンテック社と共同で行われた。JRA、富士通、富士通フロンテックの3社で緻密な協議を行いつつ、開発は進んだ。

  • ファン目線・運用目線にこだわり抜いたサービス設計。

    「競馬場の重要な新規サービスだけに、JRA様の姿勢は相当に慎重。そのため、システムの要件を固めることにはかなり苦労しました」と開発初期を振り返るのは、センターシステムの開発を担当したプロジェクトリーダーの三浦である。「私たちが開発にあたり最も大切にしていたのは、徹底したファン目線とJRA様の運用者目線に立つこと。複数案のメリット・デメリットを明示すると同時に、新機能を追加しても巨大な既存システムの信頼性が損なわれないことを重視した提案を行いました」

    たとえば、ICカードは当初差し込み式を予定していたが、ファンの利便性を追求しタッチ式に変更。ファンや運用者が使う操作画面のUIも、使いやすさ・わかりやすさを第一に設計された。「もうひとつの課題は、サービスの鍵を握る手のひら静脈認証の検証でした」と語るのは、フロントシステムを担当したプロジェクトリーダーの佐藤。「前例のない100万人規模の認証が本当に可能か確かめるため、約1000人の社員に協力を仰ぎ実験し、プロトタイプを開発。かなり時間がかかりましたが、想定通りの認証機能が実証できたときはほっとしました」

  • 競馬場の未来は、ここから始まる。

    2018年9月、キャッシュレス発売機は東京競馬場で運用が開始された。「JRA-UMACA」会員は順調に増え、キャッシュレス投票は現金投票、インターネット投票に並ぶ主要な投票サービスとして評価されている。2019年中にはJRAの全国10箇所の競馬場すべてに導入され、ウインズにも順次導入れていく予定だ。

    佐藤は本プロジェクトを次のように総括する。「今回の開発では、サービスの企画段階から富士通が積極的に提案を行い、関係各社が一丸となりプロジェクト成功に導くことができました。競馬場に足を運んで、自分たちが開発したシステムでファンの方が馬券を買うところを目にしたときは、とても嬉しかったですね」

    その言葉のとおり、このシステムはファンが使うもの。だからこそ、さらに大きく競馬場を変えていく可能性を秘めている。「馬券購入以外のサービスにも、JRA-UMACAを使えるようにする構想を、現在JRA様と共に検討しています。キャッシュレスシステムを活用して、いかにもっと楽しい競馬場をつくれるか。これからも競馬ファンの目線に立ち、考え続けていきたいです」と三浦は語る。競馬場の「未来」は、まだ始まったばかりだ。